Uniposが終わってしまうらしい。
何にでも終わりはある。不思議なことではない。
人生にだって終わりがあるのだから。
安倉寮の渡り廊下を歩いたとき、あまりの静けさに、私は「死」を思った。
半年前なら、幾何学的に並ぶ窓のどこかに西島さんがいて、「けんたろうちゃん、おはよ」と洗濯物を抱えて声をかけてくださった。
今日は誰もいない。
四階の廊下には私だけがいて、あの喧騒も、オンラインに取り込まれてしまった兵たちの叫び声もない。
静かな廊下は、少しだけ死に似ていた。
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単身赴任が始まり、久しぶりにサッカー部へ顔を出した。
知っている顔は減ったが、スポーツを愛する人たちは相変わらず体育館にいた。
昨日は「増田杯」が開催された。
波光電の元所長・増田さんが始めた大会だ。
増田さんは今ごろドイツで半導体を売りながらビールとソーセージを楽しんでいてはるらしいが、主役不在でも大会は続いている。
昨年3位、今年は4位。
しかしチーム数は6から8へ。
つまりレベルは上がった。
……と、自分を慰める。
40を超えると、1年ごとに体の変化がはっきりわかる。
車でいえばショックアブゾーバーからオイル漏れしている状態だ。
最高のパスが来ても、私の膝が拾えない。
パスミスではない。
膝が、ただ追いつかないのだ。
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ところが還暦を超えた先輩方が、俊敏に走り回る。
小玉さんも相手チームに混ざり、波光電の光を奪っていく。
化け物。野人。
いや、違う。
ただ、積み重ねてきただけなのだ。
努力は人間を“人間の限界”から少しだけ遠ざける。
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そういえば、冬季オリンピックを見ていた。
スノーボードの平野歩夢。
骨折を抱えながら、それでも彼は「かっこよさ」を選んだ。
評価するのは簡単だ。
炬燵でテレビを見ながら批評するのは、もっと簡単だ。
だが、痛みの中で戦う選手を、本当の意味で理解するのは難しい。
だからメダルには価値がある。
りくりゅうの演技を見て、泣かない人はいないだろう。
りくに肩入れするわけでもなく、りゅうでもない。
不思議なことに私たちは彼らを一人の人間として見ていた。
解説の成美さんの言う通り、あの2人でなければいけなかった。
支えあって、お互いを思いあって、完全に一つになっていた。あんな演技は、見たことがない。
フィギュアは個人が花形だった。ペアのフィギュアは、失礼を承知で言えば、本当におまけだった。
でも、そうではなかった。
個人の種目すら霞むほどに、りくりゅうは輝いていた。
一人であることより難しいこともあっただろう。
同時に、2人でなければ成し遂げることもできなかったのだろう。
演技から、今日まで、私は彼らの演技を見る度に何度でも泣くことが出来た。
もちろん、個人の種目は花形だった。天真爛漫な17歳の、あざと可愛い仕草も、いつも明るい太陽のようなかおりちゃんの緊張した姿も、そして、冬の氷をすべて溶かしてしまうような主役、アリサリウの圧倒的なオーラにも。
彼女の厚みのある髪の毛がゆれるたび、私はナウシカのテトを思い出した。
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最近は、髪の毛について考えている。
私は髪を伸ばしている。しかも一部だけ金色に染めてしまった。
当然、非難轟轟である。
私はアリサ・リウではない。ただの中年のおじさんだ。
個性的であることが拍手に変わる側の人間ではない。
指摘されるたびに、少し揺らぐ。
やはり間違っているのか。
男の髪は短くあるべきなのか。
「短いほうが似合うよ」
ロン毛を志す者にとって、それは避けては通れない通過儀礼だ。
若い頃、ハウルに憧れて髪を伸ばした。
もちろん金髪だった。
もちろんモテなかった。
ある日、ばっさり切った。
すると周囲は言った。
「ほらね、短い方がいいでしょ」
あのとき、私は少し負けた気がした。
世間に、というより、自分に。
私が私であることは、案外むずかしい。
アリサリウのように、存在そのものが肯定される人もいる。
では、もし私が本気で髪をテトのように縞々に染めたらどうだろう。
称賛ではなく、心配の目で見られるに違いない。
だが、考えてみてほしい。
人生は一度きりだ。
しかも、モテることにそれほど意味はない。
モテたところで何になる。
牛の餌にもならない。
生きることには終わりがある。
だからこそ、途中くらい、自分で選びたい。
髪を伸ばし続けることは、生きることに少し似ている。
楽なほうへ流れれば、すぐに整う。
空気を読めば、一瞬で正解になる。
いっそ切ってしまえばどんなに楽だろう。
何度も悩んだ。
チャッピーに相談したこともある。
(それはそれで別の騒動を生んだが、また別の話)。
それでも私は、
伸ばしてみたいのだ。
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ふいに滝下さんを思い出す。
数ミリも伸びていないのに床屋へ行き、見事な細川たかしカットに仕上げてくる。
あれもまた、美学だ。
たとえ滝嫁さんに「また行ったの?」と言われようとも。
「よそはよそ、うちはうち」
全国のオカンの金言である。
どう締めればいいのか分からないが、
私のコラムも、おそらくあと数回。
配信にとち狂った四天王を、いつも温かく見守ってくださる皆さまへ、愛をこめて
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天草生まれ、天草育ちのオジサンですが、ひょんなことから単身赴任になり関西へ。関西で魚が100匹釣れたら帰れるんやないかしらと淡い期待を抱きながら、日本海で魚釣りに励んでいます。キャンプ、車中泊などアウトドア全般が大好きです。