シーズン1 Ep.32 街灯がひとつ

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キーをコツンと叩く。

数秒の間を置き、窓の外をのぞく。

午前二時。

街灯がひとつ。

音はなく、確かにひとり。

散らかった部屋に転がる角瓶。

ひとつ、ふたつ、みっつ……十?二十?

数えるほどに孤独は増えていく。

先日は春ちゃんが来てくれた。

久しぶりに肩を並べて働き、

終われば笑いながら酒を飲んだ。

「友達なんていない」と言えば、

「盛ってる」とササラさんに見透かされる。

――盛り癖がひどい。

コミュ障で、ギャルに声すらかけられない私なのに。

それでも、

信じられないほど多くの友に囲まれている。

人は上を見てもきりがなく、

下を見てもきりがない。

比べることをやめたときにだけ、

すでに与えられていた幸せに気づく。

富や地位が幸せを約束するわけではない。

人生で残る資産は、

結局、人とのつながりだ。

夫婦喧嘩で落ちた夜、古閑っちが電話をくれた。

「マジすか~、仲良くせなアカンすよ~」。

ただ話を聞いてくれるだけで救われる。

生き別れた春ちゃんが現れて、

ただの労働でしかない装置のメンテナンスが

驚くほど楽しい時間へと変わる。

若い日に憧れた先輩は、

数十年の修行を経て、

ついに夢だった店を開いた。

生き別れたたくさんの仲間から、花が贈られて…

――やっぱり人生は、つながりだ。

何年離れても、

一緒に過ごした時間は色褪せず、

胸の中で灯り続ける。

料理を噛みしめながら、

隣で「美味しい」と呟く声を聞く。

その瞬間に気づくのだ。

――なんだ、人生って、結局美しい。

今そばにいる仲間も、

やがて散り散りになっていくだろう。

二度と会えないかもしれないし、

ふとした場所で再び出会うかもしれない。

「友達は三人しかいない」と嘯いても、

ほんとうは大切な人がこんなにもいる。

悔しいけれど、私は恵まれている。

盛りたいけれど、それすら必要のないほどに、満ちている。

安倉寮の窓から見える街灯はひとつ。

けれど今夜は、

この会社で出会ったすべての人に、

心から感謝を捧げたい。

――今夜は。

#その昔、職場がひとつなくなりました。後輩も、同期も、先輩も、どこかへ行ってしまいました。生きていくという、厳しい現実。会社をやめた方もおられます。先輩は次のステージに向かって、たこ焼き屋さんからスタート。数十年の修行を経て、ついに夢のお店を開かれました。阪急伊丹、haconiwaの、鶏やたびたび。やませーから春ちゃんがやってきて、仕事の終わりに先輩のお店に行きました。名家や、Pさんや、馬っちも。そんな夜に書いた作文です。夜の中に灯りは一つでも、生きてきた道のりをたくさんの灯りが照らしてくれてるような気がして。

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8月1日にOPENした、先輩の夢の店をご紹介します。

鶏や たびたび

https://toriya-tabitabi.owst.jp/
  • 住所兵庫県伊丹市中央1-7-16-1
  • アクセス阪急伊丹線≪伊丹駅≫東出口より徒歩約2分
  • 電話番号080-2536-5507
  • 営業時間月~日: 11:30~15:00 (料理L.O. 14:30 ドリンクL.O. 14:30) 17:00~翌0:00 (料理L.O. 23:30 ドリンクL.O. 23:30)
  • 定休日不定休です。お店までお問い合わせください。

さっそく行ってきました。