シーズン1 Ep7 名古屋の恋

ブログランキングに参加しています。よかったらポチっと押してあげてください。

プロローグ

十大魔王が1人、最古の魔王ミリムの正体とされる美食者が、人間界に転生された。

中部支に潜入中らしい。

おやつ無限収納のスキル、「玉手箱(ロッカー)」はスイーツ専用で、甘いものが大好きな中部支の暴食者(グラトニー)たちの胃に安定と平和をもたらしている。

最古の魔王が人間界で名乗る名前は、エリムさん。

中部支の半導体デバイス部、略して半デバの営業課の方で、どうやら私の連載をこっそり応援する会を立ち上げてくださったようです。

シェイシェイ。

中部支事務所は名古屋駅(名古屋人はめいえきと呼ぶ)にあるとのこと。私のような田舎者にとったら、どえりゃー都会の人ですが、ひとつだけ言わせてください。

SNSに、こっそりという言葉はおりゃせん。笑

【社外秘】

名古屋の恋 まだ20にも満たぬ頃、私はインターネットの世界に夢中になった。今に比べると赤ん坊のように未熟な世界。

当時は、ヤフーチャットと呼ばれるチャットルームが人気だった。

「作家志望の会」というコミュニティに所属して、たくさんの人と仲良くなった。

顔も名前も知らない人々だったが、毎日のチャットが私たちを親友にした。

オフ会という概念も生まれ、実際に出会うこともあった。

生来コミュ障だったが、恐れ知らずだった私は東京へ行ったり、広島へ行ったり。

トランスジェンダーもいれば、本を何冊も出した作家さんにあったこともある。

作家志望の会には、ひとりの美しい女性がいた。

顔も知っていたし、名前も知っていたし、電話をしたことも、手紙をもらったこともある。

だけど住所は知らなかったから、手紙は一方的に届くだけで、私は送り返すことができなかった。

名古屋の人だった。

名古屋港水族館に住んでるんだ、それが彼女の口癖だった。

若い私はすぐ恋に落ちて、じゃぁ名古屋港水族館に会いに行くよ、と言った。

会えないよ、と彼女は言ったけれど、別に来なくても良いよと答えて、私はバイクに乗って名古屋へ向かった。

名古屋港にバイクをとめて、私は彼女を待っていた。

海は静かで、風も静かで、空まで静かだった。

時間は止まっているようだったけれど、夕暮れはやがて夜になった。

ふと、目の前のベンチに女性が座った。

どこからやってきたのか、突然の出来事だった。

もしかして異世界から落ちてきたのではないか、それくらい美しいひとだった。

私はバイクに腰をかけていて、彼女はただベンチに座っていた。

海は静かで、風も静かで、月までが静かだった。

僕たちは一枚の絵だった。

そこにあったものは誰も、動いてはいけなかった。

そんなルールはなかったのに、なぜ、あの時、声をかけれなかったのだろう。

彼女はとけて消えた。

あくる日、名古屋港水族館でライオンキングの映画を観た。

それからあつた蓬莱軒に行って、ひつまぶしを食べた。

お腹いっぱいになったあとは、熱田神宮を歩いた。

巨大な老木のことを覚えている。

彼には大きな穴があいていた。

導かれるように穴の中に入り、土に座った。

木は枯れていたけれど、なぜか暖かかった。

木は何も言わなかったけれど、その肌を涙がひとすじ伝ったから、私は恋の終わりを知った。

あれから25年が経って、時代は目まぐるしく進化した。

インターネットは美しいだけのものではなくなって、さまざまな問題も生み出したけれど、良いこともたくさんある。

ユニポスなんて柔らかな発想、一昔前では考えられなかった。

感謝をすること、拍手をすること、発見すること、つながること。

日々の感謝や拍手であれば部門内だけで良さそうだけれど、生涯出会うことはないだろう、半本すべての戦士とつながっている。

きっと意味があるのだろう。逢えぬ人と、つながることにも。

#魔王ミリムに捧ぐ

#フィクション?🤭

#リエさんには秘密

コメントを残す